連載小説 「天使の証明」 第2話 翼

<<連載小説 「天使の証明」 第1話 出会い

天空から舞い降りるそれは、背に神々しいまでに大きな翼をまとった天使であった。

僕は思わず射精した。夢か。夢精であった。昨日、バイト中に見た女の子が夢の中にまで出てきた。確か自動ドアが開いて女の子が入ってきて、その後どうしたかな。何かを買って行ったけど忘れてしまった。レジは違うバイトが打った。僕はただ眺めていただけだ。

どんな顔だったか、はっきり思い出せない。ただ頭の中に残るのはあの芳しい匂いだけ。あと翼も生えていたっけ。この目で確認したわけではないが、翼はあるはずだ。以前、三島由紀夫の小説「翼」に同じようなことが書かれていたのを読んだ。翼の生えた少女、というか翼が生えているに違いない少女とそれを確認するため裸体まで拝みたいと願う主人公。そんな内容だったと思う。今なら気持ちがわかる。

朝、起きてトーストを食べた。今日は一限目から講義なので慌ただしい。量子力学の講義で2年生の頃の必修科目だったけど、落としてしまったので再履修している。あの教授は出席にうるさい。遅刻したらまず教室を追い出されるだろう。

自転車に乗り、大学に着いた。喫煙所で一服し教室に向かう。何とか間に合った。講義が始まる。しかし、眠い。

「おい、穴田!」

穴田は僕の名前だ。穴田輝雄、子供の頃は「あなる」というあだ名で呼ばれていた。流石に大学生になってからは言われないけど、たまに思い出す。

「穴田、穴田だろ。覚えてるぞ。去年も履修していたな。」

量子力学の教授だった。

「さっき説明したボーア半径について説明できるか?」

「さあ、アナルの半径なら計算で求められますけど。」

寝ぼけて変なことを言ってしまった。

「寝てるから分からないんだ。来週までにちゃんと調べておけ。えー、皆さん、ボーア半径については穴田君がしっかり調べておいてくれるようですので、ボーア半径について分からなかったら穴田君に聞いてください。」

嫌な教授だ。めんどくさいことになってしまった。ところでこの量子力学という講義、なかなか面白い。面倒な教授ではあるけども、授業と関係ない話もたまにはしてくれる。去年の講義ではシュレーディンガーの猫の話をしてくれたっけ。

細かいことは忘れたけど、箱の中に猫を入れて、2分の1の確率で猫が死ぬ装置が組み込まれている。蓋を開けて確認するまでは猫の生死はわからない。確認するまでは猫は半分死んでいて半分生きているそうだ。よくわからない。

いろいろなことを考えているうちにお腹が痛くなってきてしまった。朝食を焦って食べたのが原因だろう。こっそりトイレに抜け出す。

用を足し、思いにふける。昨日のあの天使のような女の子でも、こんな物を出すのかな。確認してみないとわからない。

また今日もバイトだ。今日もあの子が来る気がする。

講義の後、タバコをくゆらせながら、ふとそう感じた。

>>連載小説 「天使の証明」 第3話 素足

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